谷守佳代 展: 発熱する男
2023.08.28 – 09.09
KOUICHI FINE ARTSでは、8月28日(月)より谷守佳代展「発熱する男」を開催いたします。
下地の上に、木炭で沢山の無数の線を描き、消して、また描くと言う作業を経ている事で、その風景に消された線の微かな線の跡、もしかしたらそこにあっただろう線の跡、まだ何とか目に存在を確認できる線を認めつつ、谷守佳代の不思議な奥行き感のある風景が生まれています。
不完全な線の飛び交う風景の中に、人物や建物が存在しています。普通、建物は横に広がって描かれることが多いが、谷守の描く建物は上下に配置されています。それは、彼女が神戸に住んでいて神戸の街並みを意識しているからだと。
描かれているのは一体誰なのか、何の時代か、何の国か、何もわからないが、どこかユニークな人物像が表現されています。
もはや人間なのかもわからないままに、微かに彩られた色彩が人物や建物を浮かび上がらせています。それは蜃気楼のように見えて、谷守自身の哲学と思いを背負っている彼女の化身であるかもしれません。
今展では、こういう人がいたら絶対に会ってみたいと思わせてくれる人達が描かれています。ぜひ会いに来てください。
作家コメント:
「制作のプロセス」について
先ずはキャンバスに下地を作ったら、その上に木炭を使って下書きを始めます。
その時々に心に浮かんだ物を思うに任せて描いて、消して、又描いてを繰り返します。
そのうち、意図して引いた線では出せない様な面白いカタチや線が、思いがけなく浮かんでくる事があります。その面白いと思った物を中心に据え、不要な線は消し、必要な線は補強していく事で構図は決まります。
色については、多用し過ぎたら構成の面白さがそがれるように思うので、色数は絞り、バックはグレーで押さえて完成に持って行きます。
制作する上で大切にしている事が一つあります。
ちょっとユルくてとぼけた感じや思わずクスッと笑ってしまう様な「ユーモア」を画面にそっと忍ばせておくことです。
「ユーモア」は人間のみが持ち合わせている高度で上質な心の揺れであり、心の余裕をもたらしてくれます。
そんな空気が作品をゆるやかに包み込んでいると感じてもらえる様な作品に仕上がっていたらとても嬉しいです。
「家及び街並みを描く」について
画面の中央に家を1つ描いていた時期がありました。
家は雨風から人を守るだけでなく、休息や安心をもたらしてくれます。
と同時に、家という閉鎖性故に、剥き出しの個人が現れ暴力をもたらす事もあります。
「家」に潜んでいる危うい二面性を表現したいとの思いで描きました。
最近は「家」から「街並み」に変わりつつあります。
私が描くのは架空の街ですが、自分が暮らしてきた街に、懐かしさやわだかまりや後悔などの想いを重ね合わせ、二度と取り戻せない時間への惜別の思いを込めて描いています。
「人物像を描く」について
エゴン・シーレの人物像が好きで、画集を繰り返し眺めていた時期がありました。
いびつな身体の線、えぐり出すような激しい表現がとても魅力的的でした。
線描を多用するスタイルはシーレの線が今も強く残っているのだと思います。
絵に登場する人物は言いかえれば自分自身でもあるので、嫌でも自身と対峙せざるを得なくなります。そういう大変さもしっかりと受け止めて、描いて行ければと思っています。』
『谷守佳代展 – 発熱の男 -』
8月28日(月) – 9月9日(土)
14:00 – 18:00
土曜日 – 17:00
日曜日休み