奥田耕司 / Koji Okuda

Alternative Selection 3

“Tricolore”

2020.04.08 – 04.25

奥田耕司は、3Dプリンターでプラスチックの支持体を作り出し、それらの部品を組み合わせて作品を作り上げる。
しかし「猫を捻る」と言う、誰もがプッと吹き出してしまう奥田のユーモラス極まりない作品は、3Dプリンターで出力した支持体に単に色を塗って組み立てただけではない。見つめ合える猫の目を作る為に、仏師に教えを乞うたのだ。実はとてつもなく時間がかかり、恐ろしく手の込んだ作品である。今展では、杉尾信子とのコラボレーション新作が登場する。
また「猫はワープする」と言うコンセントと合わせる作品を作る為に、電気工事の資格を取得した。
元は、嵯峨御流の生け花の作家でもある。
大変器用で多彩な上、常に進化を続ける奥田のあくなき挑戦と、しなやかな感性が同時に存在する作品は、観るものに驚きと癒しを同時にもたらす。
 
『これを書いている今、私の足元には2匹の猫がいる。昔住んでいた家の床下でいつの間にかみゅうみゅう鳴いていた子猫と、道端で目ヤニだらけの顔を向けめえめえ鳴いていた子猫は、当時からは考えられないほど大きく育った。姿は勿論、それ以上に態度が大きい。
 
彼らと暮らして思うのは、「猫は役に立たない」いうことである。つまり、仕事の邪魔をする。そして要らんことをする。家での行動のほとんどすべてが要らんことである。
 
小さな頃から育てているためよく懐いているし、トイレや爪とぎなどの良く言われるようなトラブルは無い。けれど、気づけば段ボール箱の角っこを噛んでちぎったり、ゴミ箱にセットしたビニール袋のはみ出ている部分をかじったりする。水飲みの皿を前足でちょいちょいとして床に水をまき散らしたりもする。
穀物をネズミから守るという「役立つ仕事」は此処にはない。溺愛する人もいれば嫌悪する人もいる。ネズミを捕る必要のない環境の猫は、どこか現代アートを彷彿とさせる。
 
猫の作品を作り始めるきっかけはオシッコに濡れた布団であった。猫トイレが掃除されていなかったことに怒っての抗議行動なのだが、この反乱が効果的と理解したのかしばらくの間は気に入らないことがあると布団にオシッコをするようになったのである。
 
これを題材として猫とペッパーミルを組み合わせ「猫をねじる」という作品を作った。テーブルの上を散歩している猫を捕まえてかまうと、お皿の上の食事に猫が仕返しをするという作品である。ちょうどそのとき世間は猫ブームだといわれていて、猫を飼う人が増えているなんて報道されていた。猫ってこんなこともするのだけれど、あなたは許せる?そんな思いを作品にしてみた。
 
猫を観察していると面白くなって、その習性や行動を作品にしてみたくなった。
「Cat Rider」は鯛に乗る恵比寿天のイメージと、夜になると走り回る猫の習性から暴走族のイメージを重ねて作品とした。
「猫はワープする」は気が付けばすぐ傍に居たり棚の上に居たりと家中を自由に移動する猫の様子と、家の中でも色々なところにあるコンセントと合わせることで作品とした。
 
今回制作した「猫もたまには役に立つ」では、猫の役に立つ・役に立たないという評価はその人のとらえ方や考え方で変わってくる。ネズミと猫と人間の関係が、人間の生活環境の変化で移ろうように。作品では猫を上半身と下半身に分け、それを磁石で繋いでいる。ねじって楽しむ人もいれば、メモを冷蔵庫に止める人もいるかもしれない。壁に画びょうを刺してくっつける人もいるだろう。どのように関わるか、どのように評価するか。人それぞれで変わってくる。やっぱり猫は、まるで、現代アートのようではないか。』奥田 耕司