山江真友美

PROFILE

山江真友美のペィンティングは、美しくも匂い立つような妖しげな花・鳥を思わせる生き物の柔らかそうな羽、トーンを落とした架空の綻びのイメージを借りながら、これまで一貫して女性を表現してきた心象的なペィンティングである。

鳥の羽と一体化しつつ、果てしなく妖艶に何処までも広がりを続ける花弁は、女性の肌や身体を見る者に連想させる。しかしその美しい花弁を覆うのは、グレーの綻びである。その綻びは、花や羽とは対照的に女性を美しくも朽ちている花として象徴されている。実際に、花弁や羽の部分は陶器のように磨き込まれて滑らかな反面、綻びの一部分はカンヴァス地が露わになっているのが見て取れる。
そして作品に描かれて認められるのは、あくまでも山江の象徴する女性の一部分でしかない。

一部分のペィンティングから、あらゆる方向に広がり続ける花弁、綻び、そしてやはり肌のような鳥の羽を想像しながら、カンヴァスを超えた広がりの先にようやく山江が本来描きたかった女性の姿を観ることができる。

観えているペインティングの先に、観えないが存在する女性。
華やかでエロティックでありながら、色味を抑えた端正な品格、繊細で壊れそうな山江の作品は、辻仁成氏、戸川昌子氏のご本の表紙にも使用されている。
それぞれの作品はそれぞれ別々の女性達である。
また1人の女性は様々な美しさと綻びが、対照的にシーソーのようなバランスで保たれていることを示唆している。

ARTWORKS